聖火リレー混乱 中国は弾圧やめて対話を 2008年4月9日
チベット暴動を武力で鎮圧し多数の死傷者を出した中国当局への抗議の動きがさらにエスカレートしてきた。北京五輪聖火リレーは、デモ隊が抗議を繰り返し30人以上が身柄を拘束されたロンドンに続いてパリでも混乱、抗議の市民が殺到し途中で打ち切られる事態になった。暴力的な抗議行動によって聖火リレーを妨害する行為は本来あってはならない。過激なデモ隊に自制を求めたい。
同時に、なぜ聖火リレーができなくなるほど抗議の声が高まっているかを、中国当局はよく考えるべきだ。
チベット暴動は3月10日にラサで起きた抗議デモを皮切りに、四川省などのチベット族自治州にまで飛び火した。
インドに拠点を置くチベット亡命政府側は死者が計140人に上ると主張したが、中国政府は死者は20人でデモに参加したチベット人は3人だけだと発表。暴動の原因、死者数をめぐり、両者の主張には大きな隔たりがある。
真相は不明だが、当局による発表をうのみにするわけにはいかない。人権をないがしろにした弾圧が中国当局によって行われたことは容易に推測できる。
暴動は、長年の抑圧による不満が一気に爆発して起きたとみて間違いない。だからこそ、欧米諸国などで中国政府の対応を批判する世論が強まったのだ。
ポーランド、チェコ、エストニアなどは大統領、首相らの北京五輪開会式不参加を表明。ドイツも、チベット情勢とは直接関係ないとしながらも、首相、外相の欠席を発表した。
中国は「五輪の政治化」と反発する前に、ダライ・ラマとの対話の道を模索すべきだ。強硬路線は憎しみを増幅させるだけである。
今後、米サンフランシスコの聖火リレーでも市民団体による千人規模の抗議行動が予定されている。
国際オリンピック委員会のロゲ会長は「非暴力的である限り、抗議行動を尊重する」とくぎを刺した。いくら主張が正しくても法を無視した行動は許されない。
中国では今月、人権問題に取り組んでいた著名な市民活動家が政権転覆扇動罪で北京市の裁判所から懲役3年6月の実刑判決を言い渡された。外国メディアの取材を受けたり人権問題に絡む文章をインターネットに発表しただけというから驚くほかない。
「五輪を政治化させてはならない」という中国の主張はもっともだが、オリンピックの機会でも利用しない限り、人権問題の改善が望めないのが実情だろう。
中国政府は国際社会の声によく耳を傾けるべきだ。このまま混乱が続けば、五輪本番の成功さえ危ぶまれる。
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